グレショー『鬱憤』の感想(人には人の、という話)

感想

まず登場する言葉たちがとても好きでした。題材がパンデミック下の若者という現実感のあるものなのに、ニュースのような無機質さは無くて。それは、"糸電話の留守電"をはじめとしたファンタジックな舞台装置と、それに説得力を持たせる詩のような台詞の数々によるものが大きいのかなと思いました。
それから、こういう沢山の人々が影響しあって一つの結末に向かっていくタイプの物語(ex:恩田陸『ドミノ』/伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』などなど*1)がとても好きなので、幻灯劇場さん(もとい藤井さん)の作劇にもまんまとハマりましたね… *2

放送当時の感想メモ

衣装にメンカラ入ってないの初では?新鮮!歌で代弁する人物の~とか考えたけど違うような*3。糸電話の視覚的なインパクト良き!

古崎さん…オリジナルより角というか険がとれているような、優弥の言動への受け止め方が柔らかい感じ(個人的なリチャくんへのイメージが先行してるだけかも)。言い訳するような目線も良かった*4。あとサックスはお疲れ様すぎました…。"EDGES"の時もグレショーとの切り替え楽しめるタイプって言ってたような気がするから、(他のメンバーも含め)今回もその調子で生演奏の音楽劇という形態を楽しめてたら良いなあ。

優弥…本編で名字出てきたっけ?オリジナルには名字で呼ばれる場面もあるのかな。あと、部屋の窓からの景色をよく分かってなかった=引っ越したて?同棲スタートから程なく感染しちゃったのかな、辛…。留守電は「ご飯食べて元気でいてほしい」もだけど、「星の立場から~」のところが一番刺さった*5。本番で変え(ようと思って)た部分*6どこだろう?目論見通り泣かせられてしてやったり、にリチャくんが小突いてのハケぎわなのかな。腕がるんるんしてたのは役か本人か。あと言わずもがなの歌(立つ野は一人の「乾いた摩天楼に手を〜」のとこ好き)!

峠くん…大学生編として見ると主人公かな(群像劇なのは承知の上で)?という感じ。ハリポタで言うならスリザリンの子だった。身内に情け深いけど基本狡猾で気位高い、というか。大晴くん似合ってたなぁ、何かしでかしてしまったらちゃんと反省や後悔する(けどまた失敗したりもする笑)ところとか。

村上くん…こちらはハッフルパフすぎる~。商品見せるときのきゅるきゅる!善!な感じはすごかった。本人はそのつもり無くても責められてる気分になる、神父みたいな(←ガチネバやんけ)リアルにいそうでいない感じ。それから最初の糸電話の歌のラストで一番声拾えて、やはり独特で強い歌声だなと思った。正門くんとしては、同時期のヴィンセントでもある種ピュアな役だったのを思い出す。

工藤さん…いっちゃん2次元してた(?)キャラ。ヘッドロックと書籍ポップ良すぎ。末澤さんの糸電話の歌、冒頭とラストで聞こえ方が違うのは、歌詞の意味が理解できたからだけじゃないような(見返せないから曖昧、、)

清水くん…考えてないような言動や底の見えないとっつきにくさを感じる役は今までも多かったけど*7、今回もハマっている。留守電を聞く提案をする時の、自他の境界線を越えてくる感じが不思議と心地良い。「カレーパンの話しか~」の所も好き。体育座りかわいい。『ひまになっちゃった』のピアノ演奏シーンを見て、いつかコンサートのユニットorソロで弾き語りしてほしいと思った*8。「パジャマからパジャマ〜」の表現、気に入ったのかヤンタンでフライングしてたんだね(笑)

 

思い出して補足

公式ツイッターの裏側動画が毎度のことながら素晴らしいので、放送部分も思い出しながら書ききれなかった分をぽつぽつと。

音楽劇というジャンルを初めて知る。サブテキストのお話もこの回でされてたんだっけ?あと時間軸が書店・村上くんの家・古崎さんと優弥の家でずれてるのも、細切れの放送なのに不思議と理解しやすくて助かった。一気に見ないから頭を整理できるのかも。パブサして他の人の感想読んでなるほど!となれるのはグレショーの良さだなと改めて。

 

藤井さんのnoteを拝読して驚いたけど、この時そこまで緊張されてるようには見えなかった。やっぱり板の上に立つ人は違うなぁ、彼らもそうなんだろうなぁ、なんて思ったり。Tverでの配信が始まったばかりの時にもヒエラルキーエチュードをしてて、その時は惜しくも失敗だったんだよね。それからも質の高いコミュニケーションを積み重ねてきたことが伝わったし、グレショーはそれを大きく伸ばす場所になったんだろうな。

 

これ面白かったなぁ。小島くんは普段からこのくらい本音が漏れているような気がしますがどうなんでしょう。末澤くんは頭の中でしっかり組み立ててお芝居するタイプなんだろうなと思ってたから、あんまりポンポン出てこないのも勝手に納得。

 

Aぇ!ストイックgroup。たぶん3人とも全然完璧じゃないって言う。

 

放送部分だと全員分は見られなかったので有難い!ここ3人ってリアルでも唯一タメ口の組み合わせだから、そこも役に合ってて良かった(やっぱりどうしても現実の彼らを応援しているから、そっちを意識しちゃうよね、あんまり褒められた見方じゃないんだろうけど)。大晴くんのダンス、重さと緩急があってマリオネットみたいな動きで曲にぴったりだった!

 

ワークショップみたいな稽古(※参加したことないです)。投稿された時は「なんでカレーパン?」と思ってたけど、放送見たら切なくて切なくて。一口食べてみたけど味がしなくて残しちゃったのかなぁとか考えてしまう。

 

工藤さん、小学生の頃は5分休みでも校庭に繰り出す同級生たちを横目に、ひとりメダカと喋ってる子どもだったでしょ(妄想です)。そのくせいつまで経っても雌雄とか個体の見分けつかなかったのでは(妄想です)。

 

マルチアングルがほしい。いやそれも違うか。同時並行で進むあれこれに視点の置き所を迷う体験をしたい。村上くんと峠くんのポジションが逆転してたのも一回目で気付けなかったポンコツだけど…。

 

noteの「大きな俳優」、めちゃくちゃ嬉しかったんだよな。末澤くん本人でも末澤担でもないくせに。神は細部に宿る。短い尺でも手を抜かないし全力で臨んできたAぇ! groupは、私の自慢の推しです(何の話?)*9

 

今書きたかった理由

以下は長めの蛇足ですが、3カ月前放送された作品について何故今?という。ひとりごと的なやつ。

一つは神演技アワードかな。鬱憤が取り上げられる回までに感想を整理しておきたかった。約2年間見てきた中で最も好きな作品の一つでもあったし。間に合いませんでしたが。そういえば自担の小島くんは未だ受賞無しなんだよな*10・・・藤井さんのこと勝手に同担だと思ってる(おい)けど、鬱憤はくさまさやか末澤くんかなぁ、知らんけど*11。私にとっての神演技は恭平!とかジンタ!とか夕霧太夫!とかそういう声もたくさん聞くし、これからも小島くんの演技を楽しみにしてます。(外部舞台やドラマのお仕事もやってほしい!*12

もう一つは、Aぇ! groupの全国ツアーに参戦するタイミングと、自分と周囲でコロナウイルス感染症への意識の変化が重なったこと。

ここからは少々自分語り。正直2020年の流行当初は、自分の大学生生活が奪われたことにこそやるせなさを感じたものの、上京が延期になってどこかほっとしたような、執行猶予が付いたような気持ちで。(適応してしまえば大学生こそモラトリアムの骨頂ですけどね)私の狭い交友関係の中では、コロナで生活基盤が揺らぐ人々というのも実体を持たない幽霊みたいなものだった。それなりに田舎だったけどそれなりに都会でもあったので、村八分的な、第一号になって後ろ指を指される的な心配もほとんどなく。それでも知らないふりをするのは後ろめたいような気持ちで、流れてくる報道の数々を消化していた。うん、消化がしっくりくるな、結局何もできなかったもの。
だから、最近になって色んな制限が緩和されていく中で、そして母体の大小もさまざまなエンタメに触れていく中で、『鬱憤』のnoteで藤井さんが書かれてた「様々な立場の人間のギャップ」というのを思い出す瞬間が増えて。それで、今回の全国ツアーに対するメンバーやファンの声を聞いて、自分も参戦してみて、やっとストンと落ちた気がした。声出し解禁前のおてんとにも行ったけどコンサート自体久しぶりだったし、そもそも参加型のエンタメに対しては、いまいちノリきれないコンプレックスを刺激されて得意じゃなかったのもあって(卑屈すぎる)、意外と快適だなーなんて思ってたのです。
だから、放送が終わって約10日後の全ツ初日。留守番組だったけど、声出し解禁があったからかメンバーが感極まったらしい、というレポを見てかなり衝撃的だった。正門くんは(言うてもうた)ガチネバや全ツと同じくらいの公演数のソロコンも、厳しい制限の中笑顔で完走した人だったから余計に。
こういう時間差での答え合わせみたいなものがある度に彼らとの距離をまざまざと思い知らされるんだけど、今までよりダメージは無かったんだよな、不思議と。さっき流行当初の自分の話をしたけど、その後就活も大変だったり友達も増えないのに疎遠になったりとか余裕で色々と食らったし(笑)、本当にもうここは人には人の事情なんだなってやっと割り切れた気がします。もうxx年入学が一番大変とか、文化系のサークルが一番割を食ったとか(例が卑近でごめんなさい)、そういうのとも距離を置けそうな気がする。あくまで気がするだけだけど…。距離を置くからこそ思いやりも生まれるような。いかん、まとまりがなくなってきた。

とにかくこのタイミングでこの作品にAぇ! groupを通して出会えて、本当に良かったなというのが今の素直な気持ちです!関係者のみなさまありがとうございます!以上!

*1:そういえば最近読んだ『一心同体だった』/山内マリコもこういう感じだった。緩やかな連帯という意味では一番近いかも?

*2:関西演劇祭の東京公演にもお邪魔しちゃいました、鬱憤の関東での公演があれば飛んでいきます。待ってます

*3:理由知りたいです

*4:これどこの話だろう←鳥頭すぎ

*5:ディレクション部分の答え合わせで一層切なくなった…

*6:ステスクPLAY BACKより

*7:消し好きの森くんもか

*8:全ツでさっそく叶って嬉しかったな。セトリのネタバレ見た時は声出た

*9:21-22カウコン懐古モードに入ってしまいました。21年の下半期、色々あったね・・・

*10:ガチネバで受賞したね!おめでたい。

*11:くさまさやだった~!おめでとう!

*12:こんなことを書いていたら、好きな脚本家常連の俳優が逮捕された一報が。なんとなく名前出しづらくなっちまったよ、どうしてくれんだ!つい2ヶ月前舞台で見たばっかだぞ!あれもこれもお蔵入りかよ!!